「テレ東」系列で放映された(7月3日)この映画は、なぜか前売り券も購入できず、劇場にも行けなかったんですね。DVDソフトも未見で初視聴だ。劇場公開当時は、異色のガメラ(怪獣)映画として、賛否両論で、興行成績も芳しくなかったようでした。
1973年、ガメラは三重県で、複数のギャオス諸共、自爆していたとは・・・。デザインは、共に「平成ガメラ」テイストだ。
透くんが離れ島で見つけたカメは「トト」と命名。彼の幼い時のあだ名です。浮遊するトトは一度は捨てられる。しかし、透くんを追いかけての歩みはジーンときましたね。ここでは、まだペットとの交流のようで。トラックに轢かれそうになったトトを身を呈して助けるが、母親を事故で失った事との見事な対比だ。後に、更に巨大化(等身大)した際にも「怪獣は、戦って死んじゃうんでしょ。」と、生命の重みを表現している。勿論、麻衣ちゃんの病も重ね合わせてだ。
巨大になりつつ厨房での包丁との対峙。これはギロンへのオマージュなのでしょうね。
ジーダス出現。駆けつけるトト。緊張感の無い、かわいいガメラだ。シルエット的にはゴジラ(海外版)対ガメラに見えなくもない。8mという設定(この時点で)も、妙に説得力があります。車両で名古屋まで運搬されたのですから。人工的にトトを成長させ、ジーダスと戦わせようとするのは、大人の打算。ガメラの赤い石は麻衣ちゃん手術のお守りになっていたが、苦戦するトトには必要。赤い石は動けぬ麻衣ちゃんから、女の子へと数人の子供達(小さな勇者たち)に手渡しされる。やっぱり、このシーンは泣いちゃいました。永遠の生命を紡ぐかのようでした。そして、友達の石田兄弟を経て、透くんの手に渡りトトの元へ。それはトトを救うという結果を伴わない(やがてはガメラの自爆)のかもしれない。だが、強い意志を持った彼は、トトを信じる。
「大好きなのに、死んじゃうなんて、もう、そんなのイヤだよ。」
トトは、透くんにとっては、ある種「母親」のような存在感を持っているのでしょう。この時に、トト=ガメラの運命(宿命)も変わったのかもしれません。赤い石を飲み込んだトトは、円盤形態での回転ジェット。頭の中ではガメラのマーチ♪が鳴り響く。胸部は赤く発行するものの自爆する事なく、口から火球を放つ。飲み込んだ赤い石を吐き出すようでもあり、理に適っていますね。ジーダース撃破。大人はトトを捕獲しようとするが、子供(人間)の味方であるガメラは、逆に子供たちに救われた。
田崎竜太監督の、子供を丁寧に描いた演出はお見事であり、「文部省推薦」(昔の子供向け映画にはお馴染みの言葉)にしたいぐらいの作品だと思う。昨今は特に生命が、幼い頃から(親子の双方向に)軽んじられる傾向が強いだけに余計にだ。子供にしか見えないもの、感じられないものを上手く描写しているのだ。親子の絆、友情、自己犠牲の精神等の教訓が多いにも関わらず・・・。本作も例外には漏れず、「怪獣映画」との偏見は無くならないだろう。それは残念な事である。
最近のコメント